アートの仕事 in Hollywood

ハリウッド・キャラクターデザイナー片桐裕司による、ハリウッド映画の仕事の話、絵や造形の上達の仕方・プロになりたい人などに役立つ情報を発信しています

新作ホラー『傀/KAI』こっそり大々的に動いてます

久しぶりにこのブログを開きました。

 

更新しなくなってから、何ヶ月経ったのか自分でも数えるのが怖いので数えません。

 

数えたら負けです。

 

人生数えないほうがいい数字というのが確かに存在するのです。

 

それでもなぜ今、また書き始めようと思ったのか。

 

理由はひとつ。

 

新作映画を撮ります。

 

タイトルは『傀(カイ)/KAI』。

ジャンルはアクションホラーコメディ!。

 

ハリウッドで30年キャラクターデザイン/特殊メイクをやって、その後監督業に手を出して、『GEHENNA/死の生ける場所』なんていうのも撮って、その後もアメリカで3本の映画の監督。日本でまだ配給はありませんが、それでもまだ懲りずに映画を作っております。

 

懲りないというよりは、たぶん動いてないと死んでしまうからです。

 

マグロ男と呼んでください。

 

書いて気づいたけど、常に動いてるイメージとしてマグロ男としたけど、マグロ女は

 

 

いや、、、やめておこう。

 

 

で、この『傀』、そもそもどうやって始まったか。

 

きっかけは、一本の映画でした。

 

Weapons

 

何の予備知識もなく観に行ったら、これがもう、めちゃくちゃ面白かった。

 

「久しぶりにめっちゃ面白いホラー観た!」と本気で思わされた一本でした。

 

そしてちょうどその頃。

 

以前に脚本を一緒に書いたパートナー、Blitaroから「たまにはご飯行きましょう」と連絡をもらっていた。

 

じゃあということで会って話してみたら、なんと彼女も『Weapons』を観たばかり。

 

そこから話が盛り上がり、現代の日本でめっちゃ面白いと言われるエンタメホラーを作ろう!

 

いつしかその日の食事はどういう内容にするかというミーティングになっていた。

 

そして数日後。

 

Blitaroが、あっという間にざっとネタを書き上げて送ってきた。

 

これがびっくりするほど面白い。

 

読み終えた瞬間、「これはいける!」と直感した。

 

そこから二人で、長編映画用に脚色しては読み合わせ、書き直しては議論し、シーンを抜いては足し、足しては抜き……という作業を延々と繰り返しました。

 

最終的にシーン数は100以上。

 

何ヶ月もかかった。

 

低予算映画制作をいくつも経験してきた私は、どういうところに金がかかるかよくわかるので、脚本の内容を制限せざるを得なくなる事もあります。

その都度じゃあどうしたら面白さを損なわずに変更できるのか、

途中、二人で何度「これもう無理じゃない?」と言い合ったかわかりません。

 

しかし最終稿を読み返したとき、自分でも認めざるを得なかった。

 

これは絶対に面白い!

 

自分で言うな、と思った人。

 

その通りです。すいません。

 

しかし脚本作業は『これは絶対に面白い!』という瞬間と、『本当にこれがウケるのか?』という思いの波が交互にくる物です。

自分達で作った脚本くらい自分達で褒めないとやってられないんです。

そうでないと、てやんでえべらもうめと酒を煽って枕を涙で濡らすしかないのです。

脚本に愛がないと、自信を持って監督やって人に指示するなんて出来ないのです。

 

そんなわけで現状をご報告します。

 

脚本 ── 完成

主演 ── 決定。誰かは……明日正式発表予定。とんでもなくいい人を引き当てました。乞うご期待。

公式サイト ── 完成。これも近日中にURLを公開します。

ロケハン ── 明日

 

そう、明日です。

 

「ここに祠があって」「ここで儀式が始まって」「ここの地下室に……」みたいなことを脚本にさんざん書きはしたものの、実際にロケ地を見に行くのは初めて。

 

頭の中の絵と、目の前に立つ現実の建物がどれだけズレているか、どれだけハマるか。明日になったらわかる。

 

見た目だけではなく、そこで撮影する予算、役者などのメイクや控え室、駐車場、トイレなどなど様々な条件が合致しないと使えません。

候補を出しては見に行くを繰り返す地道な作業になります。

 

めんどくさいけど楽しみ。

 

この感覚を、一人でかみしめて終わるのはあまりにももったいない。

 

それでこのブログを始めようと思ったわけです。

 

 

ブログを始めるもうひとつの理由

 

映画は、一人では作れません。

これは精神論ではなくて、物理的に無理。

 

スタッフがいて、キャストがいて、ロケ協力者がいて、機材があって、お金があって、そしてそれを「観たい」と言ってくれるお客さんがいて、ようやく一本の映画が世に出ます。

 

私は今までその全部を経験してきましたが、毎回毎回、本当にギリギリの綱渡りでなんとか完成にこぎつけてきました。

 

今回もたぶんギリギリです。

 

たぶん、というか、確実に。

 

だからこそ、今回はその制作のプロセスをできるだけオープンにしていこうと思いました。

 

うまくいったこと。

 

うまくいかなかったこと。

 

ロケハンで道に迷ったこと(たぶん明日起きる)。

 

予算が足りなくて頭を抱えたこと(これもたぶん起きる)。

 

役者さんの一言で空気が変わった瞬間(これは祈ります)。

 

そういうのを、毎週ちょこちょこと書いていきます。

 

そして、もしこのブログを読んで「ちょっと続きが気になる」「この映画、観てみたい」「なんなら応援したい」と思ってくれる人が一人でも増えたら、それだけでブログを書く意味があると思っています。

 

応援の形は、なんでもいいんです。

 

ブログをシェアしてくれる。

 

SNSで「気になる」とつぶやいてくれる。

 

ロケ地候補の古民家を知ってたら教えてくれる。

 

公開されたら劇場に来てくれる。

 

どれもめちゃくちゃありがたいです。

 

この映画を、皆さんと一緒に作っているような気持ちで進めていきたい。

 

それが、このブログをやる目的です。

 

明日主演俳優を発表します。

 

そして来週は

初ロケハンの珍道中をお届けします。

 

たぶん何かしらやらかすので、その辺は安心してください。

 

人生、何が起こるかわかりません。

 

でもそれが、面白い。

 

 片桐裕司

 

Children of the cone 3

1993年

自主練期間を過ごした後に、自主練のために使わせてもらっていたスタジオのオーナーであり、師匠であるScreaming Mad George氏のところにChildren of the cone 3というホラー映画の仕事が入りました。

自分もかなり腕を上げたので、かなり多くのキャラの制作を任されることになり、ワクワクの仕事でした。

この映画は元々スティーブンキング原作のホラー映画ですが、パート3ともなると予算もかなり下がり、1作目の知名度でかろうじて続いているような作品のようです。

 

以下コンセプトデザインは全て師匠のジョージさんによるものです

最初のキャラは、登場人物が切り刻まれて、縫われてカカシにされた犠牲者

人間スケアクロウ(カカシ)

縫われたのを前提に造形

わらで傷を縫って、髪をつけて血をつけて完成!
型取り、キャスト、彩色、飾りつけ全部やってます

こんな感じでカカシのように晒されるシーンに使われました

犠牲者のおっちゃんと記念写真

そしてキャラ2

コーンの呪い(笑)により、コーンのツタ人間にされた犠牲者

これだけ見ても訳分からないけど、ツタ化した人間です
その前に彼がツタに襲われて、ツタが皮膚に入っていくシーンがあります

正面がこちら。ますます訳分からん笑

目玉をつけて歯を入れて、色を塗ったらこんな感じ

ツタが目玉をほじくってるのがミソ
目玉はワイヤーで動くようにしてます

最後はこんな感じで死にました

ところがこのツタ男は、撮影後に特撮監督が代わり、違う死に方に変わってしまったので、幻のシーンとなってしまいました。

裏話は、このプロダクションが次に計画していた映画の監督をしたかった違うFXスタジオのオーナーが、この映画の特殊メイクをタダでもっと良くしてやるから、その代わり次の映画の監督やらせろ!という交渉があったようです。 

プロダクションがひどいので、その映画も相当酷いものになってしまったようですが、、、、 

でもこの時代はまだそういう感じでチャンスがあったので、良い時代ではあったと思います。

 

そしてこの映画のクライマックスに出てくる巨大なコーンクリーチャー笑

これはオーナーのジョージさんが制作し、そのクリーチャーが死んで溶けてくシーンのために、もう一体の色を僕が塗りました。

コーンの呪いから生まれたクリーチャー
腕の一つにコーンがついてるのがミソ笑

当時はまだCGなるものは存在せず、巨大クリーチャーの設定であったら、それに見合うミニチュアのセットを作って、その前にこのクリーチャーが映れば大きく見えます

透明なチューブは、こいつが溶けるときに液体を吐き出させるためのものです。

こいつが動いて元気な時は、皆でキャラの腕を透明の糸で引っ張って上から動かしています。

死ぬ時は僕が下から首に手を突っ込んで、ハンドパペット方式で頭部を動かしています。

 

CGが主流となった今、撮影現場でこんな楽しい経験が出来るのはほんっと少なくなってしまったんだろうなぁとしみじみ思ってしまいます。

ちなみにホラー映画は夜の撮影が多く、撮影時間は日が暮れてから夜が明ける寸前まで。

夕方4時くらいにセットに行き、夜が明けて解散するスケジュールが続きます。

朝帰る時に渋滞に巻き込まれる時が最悪ですね。

そのころは家に帰ってバタンと寝て、薄暗くなった頃にばたっと起きて仕事に行くという夜の仕事の人でした笑

映画の世界は色々な働き方があるのです。

 

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若かりし修行時代

前にも書きましたが、私が所属しているSpecial Make up Effects の業界のアーティストは基本フリーランスで、プロジェクトが終わると解散して次の仕事へと渡り歩きます。

 

私はまだ新人なのでコネも少なく、仕事がない時も多かったです。

仕事がない時。辛いですよね。

そんな時はどうしているのかというと、

 

「仕事がないのは自分が下手だからなんじゃない。業界が俺のセンスを理解できないんだ!

俺の凄さがわからない奴らが悪いんだ!」

と毎日朝から酒を飲み、世の中に対して悪態をついていました。

 

嘘です

 

「仕事がない時は上達するチャンス」「仕事がなくてラッキー」

そう捉えて造形の練習をしまくっていました。

そのころの自主練作品を紹介します。

表情の解説の本を買ったのでその影響のキャラ

しょぼいハリソンフォードと、私の合気道の先生とか

(上)クリーチャーが得意じゃなかったので適当に考えて造形 

 

金がなかったのでハリソンフォードを壊して同じ粘土でゾウを作ったり

プレデターチックなやつとか


ガイバー2の仕事から数ヶ月

まぁかなり頑張っていろんなものを作ったのでこの時期にかなり上達することができました。

ガイバーが93年ですが、92年にも結構自主練で色々作ってたので、その時にもだいぶ上達したのですが、ガイバーで作られたキャラクターたちはとてつもないハイクオリティーだったため、その後の造形物のレベルは格段と上がりました。

いいものを見るというものは非常に大切なことです。

 

当時はインターネットの存在もなく、資料といえば本しかなく、それらを持っていなければ参考にするものがなく、クリーチャーなら映画で見た記憶や、人間なら身近な人の写真とかしかないため、実際にハイクオリティーな造形物に囲まれた経験は何者にも変えられないものがありました。

センスを上げるためにはいいものを見る。というのがとても重要なことになります。

人は知っていることしかできない。というのは私の理論ですが、知っていることがしょぼいものだと当然作るものもしょぼくなるのです。

上達したい人はいいものをたくさん見るといいですね。

 

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Scanner Cop 2 続編の続編

Guyver the Dark Heroの仕事を終え、Stan Winston Studioの面接があったが雇われず。

 

その年はGuyverの仕事仲間が呼んでくれたAlchemy Studioというところでちょこっとした仕事がありました。

当時Full Moon Studioという低予算でホラー映画を作りまくる映画制作会社があり、そこの制作物を任されていたスタジオです。

Fullmoonで有名な映画というとパペットマスターが上がると思います。

当時はレンタルビデオ屋が街中そこら中にあり、そこに出す用に多くのホラー映画が質より量という感じでいっぱい作られていたのです。

いい時代でしたね〜

ちなみになんの映画の仕事だったかは覚えていません。笑

 

その頃に携わったのは、Scanner Cop 2という映画

私が中学生の頃、Tha Flyのクローネンバーグ監督による、Scanners(スキャナーズ)という映画がありました。

念じるだけで人を殺せるスキャナーズという人たちの物語で、当時衝撃レベルの特殊メイクを駆使した映画で、「すげー!!」と叫びながら観たのを覚えています。

それから続編が何本か出て、スピンオフで超能力者のスキャナーズの警官が主役のスキャナーコップという映画ができて、これはその続編です。

 

ええ加減にせい。笑

 

そんな訳で自分の携わった仕事は以下

生気を吸い取られてミイラ化する人を造形する21歳の私

今見るとダサいなぁ、、、

これも生気を吸い取られた被害者

造形ダッサと思って色だけ塗ったけどポスターになってたの初めて知った笑

あと現場でメイクとかもした記憶が少し、、、
30年以上前なんでうろ覚えです。

この映画がいつリリースされたか記憶がなく、この記事を書くにあたって初めてyoutubeで見つけて飛ばし飛ばし観ました。

長く業界にいると、携わる映画でも見なくなるとよく言ってるけど、こんなに早くから見てないなんて、、、笑

 

ちなみにちょうどこの頃今まで住んでたアパートを引っ越して、初めてルームメイトのいない自分だけのアパートに移ったので、じわじわと出世した感を味わえました。笑

ただ、この映画の撮影が連日夜の撮影だったので、撮影が朝に終わって徹夜で引っ越しして、仮眠してまた夜の撮影に参加してた事を今書きながら思い出しました。

あの頃は若かったwww

 

私を含め基本皆好きで頑張ってこの業界に入ってきた人たちが多いので、任されたら徹夜してでもやりたい!という人たちは多かったです。

そういう人たちはどんどん上手くなっていいポジションに就いたし、怠け者はどんどん淘汰されていきました。

私も働きまくって上手くなっていったので、本当に将来いい立場になりたかったら20代は奴隷になれと若い子達には伝えてます。自分がそうだったので。

だけど今は労働基準法がなんちゃらうるさいんだろうな、、、

 

次回はChildren of the cone 3のお話です

 

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SFX Make up Effect業界の仕事の取り方

ガイバーの仕事が終わり、少しのんびりした生活になりました。

基本皆フリーランスで、プロジェクトが終わったらそこのスタジオでそのまま次のプロジェクトがない限り解散します。

皆そうやってプロジェクトごとにスタジオを渡り歩いているので、仕事ぶりがダメだったり評判が悪かったり性格が悪かったりしたらどんどん淘汰されていきます。

業界自体はまだ新しい方だったので入りやすかったのですが、その分淘汰される人も多かったと思います。

 

どうやって仕事にありつくかというと、一番いいパターンは、他で仕事をしている知り合いがそのスタジオに紹介してくれるケース。

あの頃はレンタルビデオ屋が大盛況で、Full Moonスタジオという映画制作会社が、レンタルビデオ用に低予算ホラー映画を大量生産していました。

仕事がなければそこに行けというくらいに常にFull Moonスタジオでは仕事がありました。

ガイバーの後私も呼ばれて、ちょこっと仕事したりしましたが、なんの映画だったか思い出せないです。笑

 

しかしまだまだ私は新人で知り合いも少なかったため、自分の作品の写真と履歴書をスタジオに送って、タイミングよく何かのプロジェクトが始まる場合は先方から面接に来なさいと連絡が来たりします。

しかしそんなにいいタイミングばかりではないので、履歴書を送った後にスタジオに電話をして、何か仕事はないか? なくてもとりあえず面接してくれないか? と積極的に売り込まなければ自分の事を知ってもらえません。

そんな風にしながら仕事を探していた若かりし時代だったのです。

 

そんな時にあるスタジオから電話でメッセージが入ってました

スタンウィンストンスタジオといって、あのターミネータープレデター、クイーンエイリアンやジュラシックパークなどを手がけた業界でも最上級のスタジオ! 

なんとそこから当時21歳の私に連絡が来たのです!

メッセージを聞いた瞬間その場でガッツポーズを取って小躍りしたのを覚えています。笑

面接場所はそのスタジオのディスプレイの部屋兼会議室です。

でかいテーブルに座って周りを見回すと、ジュラシックパークTレックスの頭やラプトルがいたり、プレデターターミネーターが立ってたり、Interview with Vampireのトムクルーズシザーハンズが立ってたり、クイーンエイリアンが壁から顔を出してたりと、ハリウッド映画に憧れてこの業界に入った者にとってはちびりそうな環境で、自分のポートフォリオを見せながら面接官の方を見るより周りが気になって気になってちび、、、ビビりまくりでした。

その当時よりもっと後の部屋の写真ですが、こんな感じでキャラクターたちが並べられてました

果たして私は雇われたのでしょうか?

 

否! 本当に残念でしたが、その時は雇われることはありませんでした。

当時21歳の私は前作ガイバー2でスティーブワンというめちゃすごいアーティストのもとで働いたことを鼻にかけて、自分の実力の低さをわきまえない生意気な小僧だったのだと思います。

人間謙虚さは大事ですね。笑

 

しかしその6年後にAIという大作映画の主役をいきなり任されるという形で雇われ6年越しのリベンジを果たしましたが、それはまた後のお話です。

 

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ガイバー the Dark Hero

日本の漫画が原作の変身ヒーローもので、ガイバーの続編です。

パート1は、監督が私の師匠のジョージさんと、共同監督がSteve Wangといって、Make up Effects業界でもトップレベルのアーティストで、Steveはなんと20歳の時にプレデターの制作を任されたすごい人です。

ついでを言うと、ガイバー1のスーツの中で戦っている人は、私の合気道の師匠で、アクションスタイルは合気道がベースになっております。

 

私が携わったのは続編で、Steveのみが監督を引き受けた超低予算の映画です。

しかしながら作り物のクオリティーは半端なく、業界でもトップレベルのクオリティーの作り物がバンバン出てきます。

そんなすごいプロジェクトに参加しました。

 

実はこの時私はアメリカの永住権(グリーンカード)を持って合法的に働いた仕事の最初の作品でした。当時21歳になったばかり。

この業界で雇われる人たちはほぼみんなフリーランスで、面接の時にお前の値段はいくらだ?と聞かれます。

そうなんです。皆自分の価値を設定していて、高ければその値段に見合った仕事ぶりでないと簡単に首も切られる恐ろしい世界なのです。

自分が値段を聞かれた初めての経験だったので、正直に”わからない。いくらくらいならいいの?”と答えたところ、「1日$50でいいか?』と聞かれて即答でイエス!と答えてます。

 

ぼったくりです笑

 

まぁそれまでは値段がちゃんとしてない仕事やタダ働きもいっぱいやってたので、1日50ドルでも安定収入があるのは自分にとってはありがたい話でした。

 

そんな感じで始まった仕事。

当時私はルーキーの下っ端なので、来る日も来る日も上手いアーティストの彫刻作品の型取りです。

予算が低いのでとにかく全て素早くやらないといけないので、毎日すごい勢いで型取りをやっておりました。

 

CGも3Dプリンターもない時代。造形は全て粘土で行い、それを型取りしてさまざまなものを作るのです。

写真が見つからないのが残念ですが、12週間のスタジオレンタルの期間が終わって作り物や型たちを全て移動する時に自分が作った型をずらっと並べたのですが、それはそれはよくもまぁこんなに沢山の型をこの短期間で作ったなぁと自分で感心してました。

 

後年ある程度結果を出して、皆に認められるようなアーティストになって自分の作品も出回ると、簡単にあの人はすごい人で自分達とは違うんだと思われてしまいがちですが、そんなことはないのです。

私にも下積み時代はあり、若い頃から上手かった訳ではなく、そんなに簡単に重要なキャラなどは任せてもらえないのです。

 

しかしながらプロジェクトも後半になるとメインのキャラの型取りなどは終わり、ちょっとした造形やあまり重要でないクリーチャースーツの仕上げなどはさせてもらえるようになりました。

映画の中の回想シーンに出てくる、進化の過程の生き物たち

頑張りましたが、本編ではこれらが入ってる器が曇りすぎてほぼ影しか見えないです

映画界とは恐ろしい世界ですね、、、

 

本作は予算がないため、パート1に出てきたクリーチャーのスーツを変形させたり付け足したりして違うクリーチャーに見せています。

私は、スティーブが造形したリザード(トカゲ)クリーチャーの頭に合うように、パート1で使われたクリーチャーの体に色々付け足して違うキャラにしています。

テストフィッティングの様子

トカゲと言ってたけど、カエルに見えるので、カエル風のイボイボを体につけまくって、カエル風にペイントしました。

監督のスティーブはそれを見て、『カエルにしたくなかったのに、、、』と一言

しかし時間も無いししょうがない!と思い切り開き直り完成させました。

 

人生開き直りは重要ですね

 

このカエル怪人は最後に間違ってダイナマイトを咥えて爆破されるという設定でした。

彼のアクションの撮影を全て終えたらこの中の人は用済みなので、縛り付けて、ダイナマイトを咥えさせて爆発させました。

今までお疲れ様でした!あざっす!!!

というのは冗談で、これに中身は入ってません。

なぜか知らないけど、皆何かを爆破させるシーンになると、セットをまだいじってる人とかもみんな集まって見学します。笑 

芸術は爆発だという言葉でも象徴されるように、爆破には人類にとって何か魅力があるんですかね。

今では爆破などもCGがメインなので、撮影現場で爆発を見る機会も減ったんだろうなぁ、、、

 

超低予算映画でしたが、監督でありクリーチャーデザイナーであるスティーブワンのセンスが光るめちゃくちゃ魅力的なかっちょいい映画になり、いまだにファンクラブコミュニティーが活発な映画となってます。

 

私自身もハイレベルな造形物の中にずっといれたおかげで結構レベルアップが出来ました。

いいものを見るというはほんと大事なことですね。

私の修行時代の記念すべき作品

皆さんも機会があれば見てみるといいでしょう。

⇩ちなみにこのメイキングの20:51あたりにちょっとだけ写ってる棒を振り回す若者は私です。スタントの人たちに戦い方を教わり練習してたところを激写されました笑

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X Japan と 聖飢魔II

あの頃は何やってたかなぁ? と思い出しながら書いております。

92年の春に人生初のハリウッド映画の仕事 Freakedを終え、生活ペースがゆっくりになり、Screaming Mad George師(以下ジョージさん)のスタジオに入り浸って何かあれば手伝ったり、自主制作したりしてたと思います。

有名なエイリアンという映画のエイリアンの型(何代にも渡ってのコピーなのでディテールがぬるい)を手に入れた業界のペインターが、キャストして色を塗って売るというので、お金もらって型に素材を流し込んでキャストしたり(今思えばその行為は違法なんだろうなぁ)

Don Post Studioというハロウィンマスクの会社でプロップを造形したり、Bronx taleというロバートデニーロ主演・監督映画の中で、車の中で燃える4人のダミーを作ったり、ちょこちょこ仕事をしておりました。

映画Bronx tale:自分の体の型をとってベースにしています 若い!!笑

出来上がりはこんな感じ。これらが車の中で燃やされます

色もいっぱい塗ってます

その他は代々木アニメーション学院が新しく特殊メイク学科を作るということで、Steve Wangという業界の有名なアーティストのクリーチャースーツのメイキングを教材として撮影するので、ジョージさんのスタジオを借りて制作していたのを少し手伝ったりもしました。

当時はまだバブルだったので、日本もお金使えたんだなぁと振り返って思います。

 

そんな中に、ジョージさんのところにX-JapanのSilent Jelousyの仕事が入ってきました

ジョージさんデザインのアルバムカバー

上はカバー写真ですが、CDに入るアルバムブックになっていて、中身につづきの写真があり、後ろから出た手が彼の顔を外して、元の顔が空白になってるというものです。

そのため彼の外された顔のダミーが必要なので、彼のライフキャストをとることになり、Xは私も好きだったため、Yoshikiに会える!と嬉しかったのを覚えています。

あまり詳細は覚えていませんが、Yoshikiさんは普通にいい人だったという印象は残ってます。

そしてその時はそれにとどまらず、なんと彼らの演奏ビデオの収録を見学させてもらえることになったのです!

コンサートホールで、撮影クルーしかいない中でのXの演奏を近くで生で聞けるというレアな体験。

コアなファンからしたらちびってしまうレベルの待遇で生演奏を聴けたのです!

ここでちびってはプロとしての威厳がなくなります。トイレに行ってしっかりちびり切り尽くしてからの見学となりました。

 

いやぁー いい体験でしたね!

しかも終わってから汗をかきながら、いやぁー大変だったと言ってるメンバーとも交流したのですから!

ファンだったらちびりまくりですね。

プロの私はトイレでちびり尽くしたからちびらんけど。

 

そんな経験をしながら、またある時ジョージさんのところに日本のロックグループの仕事が舞い込みました。

聖飢魔IIです。

恐怖のレストランというアルバムが出る時にパンフレットをつけるらしくて、そのパンフレットの中のアートワークの仕事でした。

パンフレットの表紙 ジョージさんの作品です

このパンフの中で、悪いシェフがレストランで客に何かを食べさせたら、客は苦しみ出して縮んでいって、卵になってしまう

その卵を割って料理したら、上の写真のオブジェが飛び出してくるという内容のフォトストーリーがあって、それに出てくる二段階の卵人間があり、その二段階目を私が作らせてもらいました。

 

これがジョージさん制作の第一段階

これが私制作の第二段階

混ぜてみました

まだまだ未熟ですが、この頃には結構任されることも増えてきてだんだん生意気になっていました。笑

その当時の風習かはわかりませんが、ジョージさんは特に何も教えてはくれず、彼のやることを見て盗むという伝統的な方法で自力で上達していきました。

そんな未熟な私の作品をよくも使ってくれたものです。ありがたやありがたや。

 

ちなみにこの仕事でそこそこまとまったお金がもらえたので、自分の生活水準を上げることにしました。

その時のエピソードが気になる人はこちらを読んでください。

 

そんなわけで今回は私が20歳の頃のお仕事シリーズとなりました。

次回もお楽しみに!

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人生初のハリウッド映画

私のハリウッドでの初仕事は映画【Freaked】です。

このスタジオに入るまでのエピソードはこちら 

スクリーミングマッドジョージ師のスタジオです

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日本ではミュータント・フリークスというタイトルでDVDが出ております。

ある悪い奴が開発した液体をかけられた人は皆フリーク(妖怪)になってしまい、南米の見世物小屋で働かされていたが、フリーク同士団結してそこからの脱出を図る破茶滅茶コメディー映画です。

有名俳優もいっぱい出ていて内容もめちゃめちゃ面白いのですが、制作後にFoxスタジオの経営陣が変わって、”こんな映画出せるか!” となって残念ながらほぼお蔵入りとなってしまい、マニアの間でひっそりと広まったカルト映画となってしまってます。

 

誰が出てるのかというと、

キアヌリーブスが犬男役だったり、
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ロッキー3の敵役や、特攻野郎Aチームの超怖い顔で有名なMr.T がヒゲ女役(彼が女物のドレスを着てるだけ)だったり、(ちなみにこの映画で彼は"This is me" というセリフを言ってます。有名映画で同じような役柄の人が歌ってましたよね笑)


青い珊瑚礁の超美人女優のブルックシールズが美人トークショーホスト役だが、実は彼女こそが皆をフリークスに変えた悪の親玉の化身だったという設定笑

撮影現場でのエピソードはこちら⇩

ブルックシールズノーパン事件

後日本ではあまり有名ではないけど、ランディークエイドという役者(右)や、ダイハード2のメインの悪役のウィリアムサドラー(左)も

 

2年前まで高校生だった自分にとって、当時画面の中で見ていた人たちが目の前にいて、話もできてしまうなんて!

 

憧れのハリウッド映画の仕事をしている!

それだけでもう毎日がすごく楽しいものでした。

 

私が働いていたスタジオで作っていた Eye and Eye (アイアイ)というラスタハットを被った目玉がありました。(この名前のジョーク、わかる人にはわかる笑)

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瞳の中身はForm latexという素材で、その上にクリアドームにクリアレジンを入れて固めて磨いたものを載せて水晶体を作り、白目の球体はプラスチックの巨大なドーム。その中に小人が入ってます。そしてフォームでできた瞳の部分が喋る仕組みで、ラジコンで動かしてます。

マシンガンから出る火花は空砲だけど実際にあの音と火花が散ります。

 

今だったら絶対にCGキャラなんだろうけど、当時は工夫と実験の中で作り上げられてきたのです。

当時は特殊メイク、ストップモーションアニメーション、パペット、アニマトロニクスなどがキャラ制作の全てで、この映画ではその全てがあるので、めちゃくちゃ贅沢な映画だったと思います。

例えばこの、JulieとErnieというキャラがくっつけられてジュリアーニー笑という2人で1人のキャラになるのだけど、脚は2人で2本なので、クロースアップは上半身だけのショットで2人の役者を使い、それとは別に引きの映像用に、役者JulieにくっつけるErnieのダミー、そして役者ErnieにくっつけるJulieのダミーがそれぞれ作られています。

ダミーと言ってもリアルに見える彼らの人形で、アニマトロニクスも仕込まれており、それぞれ瞬きしたり口や首が動いたりします。

それをショットに応じて、引きでJulieにセリフがある時はJulieにErnieのダミーをくっつけて、そしてその逆もあったりで、本当に工夫しながら撮影方法と絡んでやっておりました。

 

とにかくキャラクターがいっぱいいて、3つのスタジオで手分けして制作していて、お互い作り物の顔合わせをした時の交流も楽しいものがありました。

ここはどうやってるんだ?とか

時は1992年

Make-pu Effects業界もまだまだ黎明期でした。

 

粘土で造形するというのは、キャラの形を作る訳で、この業界のいちばんの花形の仕事です。

私はまだ駆け出しの下っ端だったのですが、toadという蛙男の長い舌を造形させて貰ったのはありがたい思い出です。

仕事で初彫刻した舌ベロを塗る私

ランディークエイドと一緒に記念写真

その時の私の状況は、

インターンだからお金がもらえない

ー英語力も大してない

ー初心者なので技術もない

 

と無い無い尽くしでした

マイナス条件ばかりです

その状況の中で悔しさを感じつつも、自分で決めたことがありました。

 

それは他の誰よりも働くということです。

 

どんなマイナス条件でも、その中で自分ができることは必ずあるのです。

そしてそのように実践しました。

とにかく自分に任されるものがなんでもいいから欲しいという一心で、家で寝てる以外はスタジオに入り浸ってなんでもやっておりました。

”誇り高き奴隷” と呼んでます笑

 苦しかったかと聞かれれば、そんなことはありません。

ずっとやりたかったことをしているのだから、大変だったけども苦しくはありませんでした。

 

数ヶ月経ってこの映画の仕事が終わった時に、社長のジョージさんから、『最初にお金は払えないって言ったけど、こんなに働いて貰って払わないわけにはいかない』と言って、お金を貰いました。

 20歳になって間もない頃。

そこから私はプロになりました。

 

考え、工夫して、一生懸命やるということは成長と成果につながります。

その時からずっと考えていることは、”どうやったらもっと上手くできるだろう?” ということです。その考えを常に持って何事にも臨んだら当たり前だけど進歩していくのです。

何をするにしても常にそういう考えを持っていれば職業を変えても色々と出来るようになるはずなんで、そういう習慣を癖づけることをお勧めします。

 

彫刻を通して能力をつけるセミナー:彫刻セミナー

 

ハリウッドでの仕事

実に4年ぶりのブログです!

と言うのも最近Jurassic World Reburthを観て、当然ながら恐竜はほぼ全てCGで製作されており、ハリウッドでCGが存在しない時代から仕事をしていた身としては、今更ながらどこか寂しく感じるものがありました。

僕の主催する彫刻セミナーで、先日20代の若者にジュラシックパークの事を聞かれ、僕が仕事をした体験談を話すとめちゃくちゃ喜んでくれ、仕事をしてる最中は当たり前だと思っていたことが、こうして振り返ってみると、ハリウッドの特殊メイク、Practicalクリーチャーイフェクトの全盛期に最前線にいたという経験が、とてつもなく貴重な体験だったことを実感し、その軌跡を改めて書いてみようと思い立ちました。

 

僕がアメリカに移住したのは1990年の9月

そしてインターンとしてタダ働きでスタジオに入ったのは1991年の12月でした

それから実に30年以上 Special Make up Effectsという業界でさまざまな映画やテレビの仕事をしてきて、それと同時にハリウッド映画業界の栄華と衰退を目の前で見てきました。

他のブログでちょこちょこエピソードを書いていましたが、今回は記憶を遡って初めての仕事から思い出せる限りの仕事の話を順を追って書いていこうと思います。

と同時にアーティストとして得た教訓などを交えて、面白く且つ役に立つようなブログにしていきたいと思います。

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最終章:才能なきアーティストたちへ

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なんか偉そうなタイトルにしましたが(笑)

才能なきアーティストとは、かく言う私も含みます。

改めて紹介しますが、私は彫刻セミナーというものを主催しており、今までに何千人もの生徒たちを指導してきました。

多くのアートセミナーは大概、「やり方」を教えるものが多いです。

「やり方」というのは、この様な道具を使って、順番はこうしてとかいったものです。

しかし私の初回のセミナーは、彫刻セミナーといいながら、彫刻道具の使い方や、やり方や順序などはほぼ教えていません。

しかしセミナーに参加すると、みんなそれを教わらずとも出来る様になります。

それは参加した本人たちも驚くわけですが、これはマジックでもなんでもなくちゃんとした理由があるからなのです。

これは、才能も技術力もなかった私が自分自身上達してきたプロセスを分析して考えた、私自身の経験から構築した理論です。

 今回は、その仕組みについて解説したいと思います。

 

1. 創作活動を生み出す仕組み

まず創作活動を一本の木として表現します。

その木には根っこがあり、幹があり、枝葉があります。

 

まず端っこにある枝葉の部分は何かというと、ここは「技術」にあたります。

「技術」というのは、どういう道具を使うかとか、どういう順番でやっていくかと言ったものです。

このシリーズの最初の方で解説しましたが、いくら順番や道具の使い方を学んでも、上手い人と同じ様にはできないのです。

なぜならばそこには「知識」がないからです。

「知識」とは、この形がこうなっているとか、この中にこういう筋肉が入っているかとかいった情報です。

これが木の幹の部分にあたります。

「知識」という幹を基にして、「技術」という枝葉が使えるのです。

いくらうまい人の技術を真似ても、その人の知識を知らなければ、決してその様にできる様にはなりません。

これは創造活動における絶対的な条件です。 

前にも書きましたが、デッサンがめちゃくちゃうまい人でも、造形が全然ダメな人がいます。

hiroshikatagiri.hatenablog.com

それはデッサンの技術という枝葉だけを鍛えて、形がどうなっているかという知識を得る事をあまりしなかったからなのです。

そういう場合は、見たものしか描けなくなるのです。

人の顔の正面を描いていて、じゃあその人が首を傾げて少し横を向いたらどうなるのか? となった時に描けないのです。

いくら描く技術があったとしても、モデルがポーズを変えた時の形を想像できなければ表現することはできないのです。

知識があってこそ、技術が役に立つのです。

技術と知識

これが木の枝と幹になります。

 

単純に上手になるというのは、知識を得る(勉強する)技術を磨く(練習する)の繰り返しによるものです。

ひたすら勉強して繰り返し練習をすれば確実に上手くはなっていくのですが、やらねばやらねばという義務感になってくると、だんだん苦しくなってきます。

誰かにさらわれて閉じ込められて、無理矢理練習をさせられる感じですね。

hiroshikatagiri.hatenablog.com

そうなると、上達スピードが極端に遅くなります。

そして嫌気がさして、繰り返すことが苦痛になるという悪循環に陥ります。

上達しないから、自分には才能がないから努力しても無駄なのではないかと思ったっりしてしまいます。

 

そこでその根っこの部分にさらに重要なものである「心」があるのです。

2. 枝葉や幹よりも大切な根っこ

あれをしなければ、これをしなければという気持ちの代わりに、ああしたい、こうしてみたいというポジティブな自発の心ですね。

つまり自分が何をやりたいのか、何を表現したいのかということです。

それを根底に持って、そのやりたいもののために勉強し、練習するというポジテイブなサイクルを作るのです。

そうすれば続けることができます。

そして続けられれば確実に上達するのです。

↓上記の理由で私自身が大幅に上達するきっかけを掴んだ経験の話です

blog.livedoor.jp

3. バランスの取れた練習を心がける

この連載を通して、「気持ち」「勉強」「練習」の3点のありようと重要性を解説してきました。

 

知識は当然大事なので、勉強しなければいけません。

そして練習をしなければ当然上達はしません。

しかし、一番重要な気持ちが苦しいと、勉強も練習も同時に苦しくなって続けることが困難になってしまうのです。

 

これを読んでくれている皆さんは、本来は創造することが好きなのだと思います。

好きなはずなのに苦しくなってしまう。

そんな時は、気持ち、勉強、練習のバランスが崩れていると思ってください。

そんな悪循環に陥った時の解決策として、これまで書き連ねてきた理論を使ってもらえればと思います。

 

私の主催する彫刻セミナーは、技術力の向上と、見る目を養えるのはもちろんですが、それ以上に大事な、技術と知識を最大限に発揮するための気持ちを大いに高めることができます。

 

何よりもそれが上達への最大の近道なのです。


気持ちが高ぶれば、自信が持てる様になれば、自発的に勉強や練習をすることができるのです。

 

絶対に無理だと諦めていた美術の仕事に就こうと、セミナーの後に一念発起してその夢を叶えたり、すでにプロだけど伸び悩んでいた時に参加して壁を破ることができたり、どこの教室に通っても自信が持てなかったのが、私のセミナーに参加して自信をつけることができたりと、その様な嬉しい話は枚挙にいとまがありません。

 

私自身も価値を感じて全力で臨んでいます。

 

理論も大切ですが、何よりも大切なのは「やる気」を持つことだと思います。

 

その様なきっかけを作る手助けをできることは何よりも幸せなんだなぁと感じてセミナーを続けております。

 

出来ない人ほど、自信がない人ほど早く来たほうが得です。笑

もう少し上達してから参加しようと思ってる人は、とんでもなく人生を損しています。

セミナー後にやる勉強方法と上達速度が明らかに変わるのですから。

 

少しでも興味があれば是非ご参加してもらえればと思います。

 

 

架空の生き物をリアルにするためには

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リアルな架空の生き物をデザインするために必要な事。

それは解剖学です。

でも想像上の生き物だったらそんなものにこだわらなくたって良いじゃんか。

実際存在しないんだから。

と言いたい人もいるかも知れませんが、そんな人たちは前回の記事を読んでもらえればと思います。

1. 解剖学の重要性

解剖学、つまり骨や筋肉の仕組みを知る事は、空想上の生き物を表現する上で非常に重要な要素になります。

例えば人の背中に鷲から切り取った大きな翼をくっつけても、骨や筋肉がどの様に羽の羽ばたきに作用しているかを表現できないと、実際に飛べそうなリアリティは出せないのです。

まさに取ってつけた様に嘘臭く見えるのです。

尻尾の表現でもそうです。

よく私のセミナーで生徒が尻尾を作る時、なんとなく細長いものをつけてるだけということがよくあります。

しかし実際の生き物をちゃんと観察すると、脊椎とそれを囲む筋肉の形がちゃんと見て取れます。

解剖学を意識することにより、形をもっと読み取れる様になるのです。

蛇などでもちゃんと観察すると、脊髄とその周りの筋肉の形がちゃんとあり、体の曲げ方による筋肉の作用もちゃんと見て取れるのです。

胴を輪切りにしても、断面はまん丸ではないのです。

リアリティの表現には解剖学の知識が必要不可欠になり、それ無くしてはリアルに作ることは不可能なのです。

 

しかしながら同時に解剖学にはあまりこだわってはいけません。

2. 解剖学の弊害 

すみません。

とんでもない矛盾を今書きました。

そうなのです。

解剖学にあまりこだわりすぎるのも問題なのです。

これは私自身が陥ってしまった罠でもあります。

 

若い頃人間と解剖学を一生懸命勉強、練習していた時期がありました。

しかし我々の仕事は、人間を作るよりも、クリーチャーやエイリアンなどのキャラクターを作ることが多いのです。

それらを造形する時に、人間の骨格がこうだから、筋肉がこうだからと理屈をこねて作っても、人間の見た目からなかなか離れられなくなり、実につまらないものしかできなくなってしまったのです。

これはコマーシャルアートに生きる我々には致命的なことであります。

面白いものが生み出せないのですから。

ここに知識の弊害というものがあります。

 

知識が増えると、“これはこうだから、こうでなくてはいけない“ という頑固な頭になってしまいがちなんですね。

“こうでなくては“、”こうあるべき“ に囚われて、本来自由であるべき想像力も、自分でリミットをかけてしまうのです。

それが悪化すると、「リアリティは本当はこうなのに、あいつのやってることは間違ってる」とか他者の批判をし出すのです。

3. デザインがカッコ悪ければボツ

テーマがもしも、ドラゴンを解剖学的に検証しよう!とか言うのであればそれでもいいのですが、我々がクリーチャーなどをデザインする時は、映画やテレビに出ると言うのが前提になります。

そうなると、当然リアリティーも大切なのですが、デザインのかっこよさがどうしても必要になります。

いくらリアリティーはこうだと主張しても、カッコ悪かったらボツになるし、人気も出ないのです。

じゃあどうすればいいんだよ! という声があると思うので解説します。

4. ファンタジーキャラのデザインの考え方

架空の生き物をデザインする時は、まずは好き勝手やっていいのです。

頭をもっとデカくしたれ。

手の関節増やしたれ。

アバラをなくして胴体は軟体動物にしたれ。

ケツにツノつけたれ。

肛門を菊ではなく薔薇にしたれ。

などなど

自分がいいと思えるのであればなんでもいいです。

しかしなんでもいいと言っても、自然界(地球の)にはバランスというものが存在します。

ここをデカくしたら、あっちの方もデカくないとバランスが取れないとか、ここを曲げたら、もっとこっちを曲げなきゃバランスがおかしいとかいう感覚があるのです。

それを無視すると非常に不自然になり、リアリティーが出なくなります。

そのバランスを守った上で、好きな様にやってみるのです。

デザインがメインで、解剖学はその次になります。

我々は学者ではないので、“それっぽく” 見えればなんとかなるのです。

だけどもデザインがダサかったら、解剖学がちゃんとしていてもどうにもならないのです。

この優先順位が非常に重要で、解剖学に振り回されるのではなく、自分がやりたいデザインを中心に置いて、解剖学はツールとして使うというのが非常に効率よく、その上苦しさのないやり方です。

※ちなみに化石などから恐竜など古代の生物を再現するというアートも存在します。そちらに関してはデザインのかっこよさよりも、徹底的に解剖学に基づいたリアリティが必要になります。

そこで一句

勉強は すれどもそれに とらわれない。

それがコマーシャルアートの解剖学に対する良いアプローチであると思います。

そしてその結果、カッコよくリアルなものができてくるはずです。

勉強してもそれにとらわれず、”いいデザイン”という目的のために使いこなすのです。

いざとなったら知識を捨てる勇気も必要なのです。

5. 正しい解剖学を求めない

矛盾するようですが、これは非常に重要なことになります。

よく聞かれるのが、架空の生き物を作るとき、”何が正しいのか、何が正解なのかわからない”ということです。

では正解は何か?というと、

正しいファンタジーキャラなど存在しないということです。

どういうことかと言うと、それは実在しないからなのです。

実在しないものに正しい形などないのです。

当たり前といえば当たり前なのですが、多くの人がこれを追い求めて永遠と悩み続けているのです。

作り物である以上、正しい作り物など存在しない。

これが大前提になります。

 

では何を拠り所にして作ればいいのか?

と言うことになりますが、答えを言えば、実際に生きているように見えるのか?ということになります。

今はものすごい量のキャラクターがネットを見れば溢れかえっているので、それらのリアルなキャラを真似てみるのが近道かと思います。

 

もう一つは、どんなキャラにするのかまず自分で決めることです。

何も考えず、なんとなくカッコよくしようとデザインをこねくり回してキャラを作っていくと言うよりも、”力持ちでおっちょこちょい”とか、”力は弱いけどずる賢い” とか最初にしっかりとした設定を決めてみることです。

すでになんとなくイメージが湧いてきたのではないでしょうか?

そしてデザインするキャラが自分の設定通りになるような形を考えるのです。

そして最終的にそのキャラが自分の設定した通りに見えるのか?

それが一つの正解ですね。

外に答えがあるのではなく、答えは自分の中にあるということです。

正解が存在しない以上、自分の中でそれを決めなければいけないのです。

それを繰り返すうちにだんだんとデザインができるようになっていくはずなので、あれこれ悩むより数をこなすのもとにかく大事だということですね。

 

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ファンタジー作品のキャラクターを作るために

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私のことをあまり知らない読者のために解説しますが、私の本業は Special Make up FX Artistと言って、ハリウッド映画に出てくるクリーチャー、エイリアン、恐竜、動物の制作、人間のダミーや、若い役者を老けさせたりモンスターにしたりという特殊メイクなど、多岐にわたる、キャラクターをデザインしたり作ったりする仕事です。

簡単にいうと、作り物を本物の生き物のように見せる仕事です。

今回はリアルな生き物とはどういうものなのかを解説したいと思います。

1. 架空の生き物の作品例

映画で自分が携わった作品の例を挙げると、

パイレーツオブカリビアンー命の泉」で砂浜に横たわる人魚の死体

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「キャビン」の半魚人

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「ロサンゼルス決戦」のエイリアン

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バトルシップ」のエイリアン

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「タイムマシーン」の地底人

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エルム街の悪夢」の殺人鬼フレディー

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「キャプテンマーベル」のエイリアン

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これらはほんの一部ですが、今まで随分と色々な架空の生き物を作ってきました。

実際に存在しない架空の生き物を、本当に生きて存在しているようにするわけです。

作り物を本物に見せるためにはもちろん高度な技術が必要なわけですが、それ以前にリアルなものとはなんなのかがわからないとお話になりません。

プロとしてはそれを研究して勉強しなければいけないのですが、実はリアルかリアルでないかは、なんの勉強もしていないど素人でも分かるのです。

なんとこれがリアルとは何かの謎を解くための重要なキーであるのです。

2. 素人でもリアルかリアルでないか分かる。

作り物の映像などを見て、作り物くさいなぁとか、うわ、本物みたい! と素人でも簡単に判断できるのです。

つまりリアルかそうでないかは誰でもわかるのです。

 

だけどその判断はどこからくるのでしょうか?

 

我々は生まれてから今日まで、いろいろな生き物を見て育ってきました。

自分や兄弟や両親などの人間をはじめ、飼っている犬や猫などの小動物、甲虫やクワガタ、魚や家畜、テレビやネットなどでは自分の身近にいないライオンや象やキリンなど、実に様々な生き物を見てきています。

 

そしてそれらの生き物の見た目や形が無意識に脳内にインプットされているのです。

 

例えば馬を見た時、あ、これは馬だ。と分かるし、像を見た時、あ、これは象だ。と分かるのです。

なぜ分かるのかといえば、当たり前なのですが、馬や象を知っているからです。

そこで誰かが作ったハリボテの馬を見た時、なんとなくの形から馬であるとは判断できるけど、同時にリアルではないとも判断できるのです。

それはなぜかというと、我々は本物の馬を知っているからなのです。

ハリボテの馬は自分が知っている本物の馬と比べて、違うと判断しているのです。

つまりどういうことかというと、作り物を見た時、人は無意識に自分の知っている記憶と比べているのです。

3. リアリティーは無意識の記憶

我々は、意識して知ろうとしていなくても、馬やライオンがどういうものなのかをすでに知っているのです。

例えその出来の悪い馬のハリボテが、惑星ガモスに生息する馬とそっくりで、ガモス星人にとっては超リアルだったとしても、我々地球人にはまったくリアルではないのです。

我々はガモス星の馬を見たことがないのですから。

ファンタジー作品は想像力が大事だと思われがちですが、もちろん大事ではあるのですが、決して好き勝手想像しているわけではありません。

4. 想像力の源

想像力とは何から来るのかというと、我々が今まで蓄積してきた知識の組み合わせです。

だから知識量が乏しければ、想像力も乏しくなるのです。

そしてリアルにするためには、かなりロジカルに考えて自分の知ってる生き物としての存在感を出さないと、リアルになり得ないのです。

それらを見る人たちは、自分たちの知っている地球上の生き物と無意識に比べているのですから。

だから架空の生き物をリアルにするためには、地球に存在する生き物とどこか似ているというのが大前提になります。

次回はリアルにするためにどうしたらいいかをもっと具体的に書こうと思います。

 

↓彫刻セミナー東京一般3月:受付中

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解剖学の勉強方法

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 私の彫刻セミナーに参加する人たちで、解剖学を学んだことがなくて自信がないと言われる人たちが多いのですが、実は私自身もどこかで学んだ訳ではありません。

解剖学を正式に教えている教育機関が存在していると漠然と考えて、そこでちゃんと学ばなければ本当に勉強した事にならないとでも思っているのかもしれませんが、美大などでもちゃんと教えているところはかなり少ない様です。

自分が特別なのではなくて、世の中で解剖学をある程度知ってる人たちはほぼみんな独学と思っていいと思います。

だから正しい解剖学の勉強の仕方なんて存在しません。

その様な前提で、今回は私なりの解剖学の勉強の仕方を紹介したいと思います。

1. 解剖学は本を読むだけでは身に付かない 

勉強といえば、机に座って本を開き、それを一生懸命にメモったり覚えたりする。

そんな印象がありますね。

しかし私は机に座って解剖学の本をじっくり読んだことはほとんどありません。

だけどもそれなりの知識は頭に入っております。

解剖学の知識に関しては、今は本やネットで情報が出回ってるので、どこかで学ばなくても知識を得ることはいくらでもできますね。

知識を得る →  絵や造形の作品に反映する

これが多くの人が思っているであるだろう解剖学の勉強の正しいやり方です。

しかし私を含め私の所属する業界のアーティストは違う勉強方法をしてきました。

それは

絵や造形を始める →  知識を得る

という図式です。

全く反対ですね。

2. 知識を得てから実践ではなく、実践して知識を得る

本を読んだりして闇雲に解剖学を覚えるのではなく、まず作るものがあり、作る過程の中で必要な知識を覚えるというものです。

例えるならば、崖から落ちながら飛行機を組み立てるようなもの。

まずはとりあえず落ちてみる。

落ちてくから落ちないように、あれこれいじってみる。

つまり使いながら知識を得るのです。

自分の作品を作りながら、解剖学の本やモデルを参考にするのです。

 

使いながらの知識が非常に大切で、実践と言う経験に基づく知識なので非常に強いフィードバックで頭に知識が残ります。

これを経験知と呼びます。

 

解剖学を知っていればいずれ役に立つからとりあえず勉強しておこう。

まずは解剖学を勉強してから作品に取り掛かろう。

真っ直ぐ立って両腕を軽く広げた基本ポーズでまず骨や筋肉のつき方を理解しようとする。

このように勉強しても、ほぼ確実に忘れます。

すぐに使わないからです。

それは家で机に座ってバットの振り方を一生懸命頭で覚えてから素振りをするようなものですね。

3. とりあえず制作する事を続ける

今知識などなくてもいいのです。

とりあえず描いてみるなり造ってみることが大事なのです。

描きながら、造りながら解剖学の本を開き、そこにある知識を当てはめてみる。

作品のリアリティを増すために、制作しながら知識を得ていけばいいのです。

ニュートラルなポーズの解剖学の本や模型を見て、この筋肉のつき方で、右腕がこう上がったらどうなるかを考えながら作品に反映させます。

そうすると知識を覚えるだけでなく、同時に知識を使うという経験もするので、確実に身になると同時に、知識の応用力もついていきます。

最初にできるものは酷いものかもしれません。

それでもいいのです。

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いきなり完璧なものなどできるわけがないのです。知識が圧倒的に足りないのですから。笑

しかし次に作る作品は前よりも必ず良くなるはずです。

それは前回身につけた知識をもう少し使えるようになっているからです。

 

その様にして制作しながら本を見て確かめるという数をこなしているうちに、自然と知識は増えてきます。

さらにどんどん繰り返していくうちに、頭の中の知識が強化されていくのです。

制作を重ねるごとに表現力は上がっていくので、とにかく続ける事が重要です。

4. 中身を知り、表面を観る

筋肉を勉強して、どの筋肉がどの骨のどこについているかを知ることによって、人がどんなポーズをとった時でも、筋肉の変化を予測して表現することができるようになっていきます。

とことんリアリティを追求したいのであれば、そのような個々の筋肉のつき方という膨大な情報が必要になってきます。

それは非常に重要で必要不可欠な知識なのですが、私を含め、解剖学を勉強した時に陥ってしまう罠があります。

それは、個々の筋肉を表現しようとしすぎて筋肉お化けになってしまう傾向があるということです。

解剖学の本のように、実際の筋肉はそこまで整った形はしていないし、その上に脂肪や皮膚がのっているので、そこまで筋肉の個々の形が表面に全て反映されているわけではないのです。

 

解剖学の本を見て筋肉の形とついている場所を知る事は大切ですが、それがどのように表面に現れるのか、実際の人を観察する事がそれ以上に大切になるのです。 

中身がどうなっているかの知識を持って、表面を見る。

個々の筋肉の形をどう自分なりにまとめるか。

この辺りのさじ加減が非常に難しいのですが、これは経験を重ねていくしかありませんね。

5. 正しい解剖学に囚われない

矛盾するようですが、解剖学を勉強する弊害は正しくしようとしてしまう事です。

なぜなら完璧な解剖学の形というものは存在しないからです。

よく聞かれるのが、”これは正しい形なのか?” という質問です。

100人人間がいれば、100通りの体型があり、これこそが正しい体型、正しい筋肉だというものはありません。

明らかに不自然であれば直した方がいいですが、正しい形をいくら追い求めても、そんなものは存在しないので、自分がやりたい感じで出来たのならば、そこでよしとするといいでしょう。

正しい筋肉のつき方はこうだから、こうしなければいけない。と思ってしまわないこと。

これは我々コマーシャルアートの世界で生きる者にとっては非常に重要なことで、いくらリアリティを追求し、正しさを追い求めたところで、それがかっこよくなければ、美しくなければ人々には受け入れられないのです。

正しい骨や筋肉はこうだからこうしなければいけない。こうでなければいけないという考え方は、自分の心を萎縮させてだんだん苦しくなっていきます。

そして何より魅力あるものを産み出せなくなってしまうのです。

解剖学的知識はあくまでも道具であり、その道具に振り回されてはいけないのです。

↓関連記事

何を表現したいのか?が根本にあって、その表現を助けるための解剖学です。

あなたの気持ちを根本にして、解剖学はあくまでもあなたの道具として使うべきなのです。

解剖学はあくまでもツールである。

解剖学を根本にして、”正しい解剖学はこうだから、この形はこうでなきゃいけない” に囚われてあなたの作品の魅力を潰さないようにしましょう。

6. 解剖学は立体を造って覚える

そして一番効率の良い勉強方法は、二次元でなく、実際に立体で筋肉を作る事です。

筋肉が骨に向かっていく立体的な奥行きとか、筋肉が他の筋肉に重なる立体的な角度とか、本に載ってる2次元の筋肉図を見ただけで理解するのはまず不可能です。

私のセミナーにも多くの2Dアーティストが参加しておりますが、皆一様に、立体はわかりやすいと口を揃えて言います。

 解剖学を教えている美大の先生でも、絵だけではピンと来なかったある筋肉のつき方を、造形した事により理解出来たとのことです。

頭でわかっているのと、実感としてわかるのでは大きな違いなのです。

筋肉の構造を深くを覚えたいのなら実際に立体を見て、実際に作ってみる事が一番の近道です。

立体で覚えてみたら、必ず絵などの2次元にも確実に反映できる事でしょう。

7. 筋肉よりも構造

ここまで解剖学のことを書いておいてなんですが、人体表現の上で、筋肉よりももっと重要なことがあります。

それは構造です。

私のフィギュア指導経験の話です。

私の主催する彫刻セミナーでは、初めは胸像しか指導しておりませんでした。

それが参加者たちの、フィギュア(全身)を学びたいという多くの声のもとフィギュアクラスを開催したところ、これがまぁ受講生たちのあまりの出来の悪さに衝撃を受けたのでした。笑

中にはCGモデリングや造形のプロもいたのに、ここまで人体をわかっていなかったのか!と、とてつもない衝撃だったのでした。

知識量の不足が原因であったため、次からはヌードモデルを雇うことにしました。

人の形をよくわかっていない状態で作るのと、見本が目の前にあるのとでは雲泥の差で、当然結果はよくなったのですが、それでもまだ出来はひどいものでした。

理由を考えたところ、人は筋肉を見ると筋肉を造ってしまうという、当たり前のように聞こえることが弊害になってしまっていたからでした。

解剖学を意識すること、筋肉を意識することが、人体を制作する上で邪魔になってしまっていたのです。

意識してはいけないのではなくて、それを意識するあまり人体の全体構造が見えなくなってしまうんですね。

そこでさらに考えてたどり着いたクラスが、クイックフィギュアクラスというものでした。

それは1日で人体を4−5体、それを3日間続けるという過酷なクラスで、彫刻ブートキャンプとも呼ばれています。笑

筋肉をじっくり作る暇を与えないことにより、細かいことをせずに強制的に全体の形を取れるようになる仕組みです。

これが大当たりで、参加者の3日での成長はすごいものとなりました。

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解剖学は非常に大事なのですが、それに囚われて全体を見失わないようにしなければいけないのです。

それはもう訓練していくしかありませんね。

順序立てて勉強するのも大切だと言えます。

 

最後は自分のセミナーの宣伝になってしまいましたが、セミナーでの指導を通じて自分が得た、解剖学に関して非常に重要な考えのシェアなのでご容赦ください。

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普段から出来る人間の顔の勉強方法

本を読まないと勉強できない。

絵を描いたり造形しないと成長できない。

そう思ってはいませんか?

もちろんそのように実践するする必要はありますが、上達方法はそれだけではありません。

毎日いつでもできるのです。

皆さんはどれくらい電車やバスに乗る機会があるでしょうか?

最近はコロナの影響でだいぶ減ってしまったとは思いますが、人が密集して集まっている状況というのは勉強のチャンスなのです。

1. 人をよく観察する

私がよくしていた(今でもしている)事は、電車で立っている時、目の前に座っている人をめちゃくちゃ観察することです。笑

特に人の顔を上から見たらどうなっているのかをありありとイメージできる人は少ないのではないかと思います。普段滅多に見ることがないからです。

イメージが浮かばなかったら見ればいい

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とても単純なことです。

そうやって観察していると、実にいろいろなことに気づくことができます。

本当に様々な顔があるし、正面から見るだけでは決して想像もできない奥行きも見れます。

しかしいくら見たからと言って、その形を覚えられるのかというと、そんな簡単にいくものではありません。

覚えるためにはもう一工夫必要になります。

2. 形をなぞって記憶する

私が若い頃行っていた訓練方法は、人の顔を見た時、例えば鼻の横の斜面とほっぺたのふくらみなどを観察し、それから目をそらすか目をつぶるかして頭の中で造形してみるのです。

最初の頃は頭の中で、今見た構造を追うことができませんでした。

なぜかというと、自分の頭の中に人の形の立体の詳細がインプットされていなかったからなのです。

人の顔には大体の法則があり、個人差はあれどもそこまで大きく違うものではありません。

その基準を逸脱するといわゆる奇形といったものになってしまうので、普通の人であれば、人の顔には大まかな法則があります。

それを立体的に理解できてるか否かで、自分が生み出すものに大きな差が出ます。

造形だけでなく、絵を描く時に頭の中に立体図ができてると画力も格段と上がるのです。

自分の知識をテストするのに、この観察後に頭の中で造形するというのは非常に分かりやすい方法です。

その知識というのは、筋肉がこうなってて骨がここにあってとかいう解剖学的な理屈ではありません。

最終形がこういう形になっているという認識。
つまりその形を実際に作れるという、実践できる知識のことです。

厳しく言いますが、どんなに美術や解剖学の本を読んで納得して知識を得たとしても、その形を再現できないのなら使えない知識です。

理屈を聞いたときに「そんなの知ってるよ」と短絡的に思ってしまうことは実に危険なことなのですね。

知っていても再現できなければ本当に知っていることにはならないのです。

それが出来るようになるまでアウトプットを続けていけば、だんだんと頭の中の立体図は精巧になっていきます。

見るだけではまず忘れてしまいます。

だけど見たものを表現するというプロセスを得ることによりインプットが強化されていくのです。

見たもの(インプットしたもの)を頭の中で再現(アウトプット)する

必ずしも絵を描いたり造形したりせずとも、成長は可能なのです。

人と話をしているときも同様のことができます。
話を聞いているフリも上達させるべきなのです!(力説)

 

昔アートスクールで造形を教えていた時、そのクラスにはモデルがいて、皆でそのモデルを見ながら造形するのですが、皆同じモデルを造形しているにもかかわらず、作っているものが、それぞれ作っている本人に似てしまうのです。

なぜなんだろうと考えたところ、人は油断すると、自分の頭の中の思い込みを出してしまうのだということに気づきました。

つまり皆、顔とはこうなんだという定義があり、それは何より自分の顔が基準なんだという事なのです。

世の中で一番見ている顔は、毎日鏡で見ている自分なのです。

無意識にインプットしていたのですね。

インプットが多ければ、記憶に刻み込まれるのです。

色々な人を観察することでインプットし、頭の中でや実際に造形してアウトプットしていき、

数による経験で、人の顔の形の情報は強化されていきます。

3. とにかくインプット・アウトプットを繰り返す

絵を描くなり造形するなりアウトプットする機会があればそれをし、無理であれば頭の中で再現するだけでも大きな成長になるのです。

外に出れば毎日でも出来る事なので、通勤通学の際や、人と話してる最中など、人と会ってる機会を逃さずに勉強できれば確実に能力が上がるので、普段から観察する癖をつけるといいですね。

そしてそれだけではなく、映画やドラマを見ている最中にも登場人物の観察はできます。
もちろん物語に集中できる保証はありませんが、、、

 

ちなみに絵の上達も、立体を理解することにより格段とできるので、レベルアップを図るなら立体造形してみることをお勧めします。

 

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効率的な上達方法

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これまでは上達するための【考え方】に重点を置いて書いてきました。

ここからは、どのように勉強すればいいのか【やり方】を書いていきたいと思います。

私が職業柄メインでクリエイトしているのは、エイリアンやクリーチャーなどの架空の生き物ですが、時折人間のダミーなどを作る機会もあるので、造形物が本物の人間に見えるレベルまで造形しています。

私のセミナーでも人間を学びたいという人が多く参加しているというのもあり、上達方法は人間編と、クリーチャー・キャラクター編に分けて解説したいと思います。

上達法:人間編

今まで私の『彫刻セミナー』では2000人近くの受講者を指導してきました。

これだけの人数をみていると、多くの人が陥りがちな間違いや勘違い、そして上達を阻んでいる誤った見方、考え方など、多くのことに気付く事ができました。

それを踏まえた上で改良を重ねながら実施しているクラスに、『クイック造形クラス』というのがありまして、これが非常に大きな効果をあげています。

フィギュアと顔の2種類のクイック造形クラスがあるのですが、これがどういうものかというと、顔の造形、もしくはフィギュアの造形を1日4体くらい作るクラスです。

多くの人は、そんなことできるのか? と最初は思うのですが、出来る出来ないに関係なくまずやってみるのです。

というよりやらざろうえない状況に追い込みます。(笑) 

 

1. 大雑把に捉える 

まずは人間の構造の大雑把な形をレクチャーします。 

この『大雑把』というのが非常に重要で、
大概の初心者は、顔であれば目と鼻と口に注目してしまい、フィギュアであれば筋肉に注目してしまいます。

ものすごく当たり前に聞こえるのですが、実は目と鼻と口を見ようとする事、筋肉を見ようとする事がいいものを作る妨げになっているのです。

どういうことでしょうか?

下の写真をみてください。

これが誰だかわかりますか?

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正解はトムクルーズアントニオ猪木です。

彼らを知っているのであれば、ほとんどの人が答えられたと思います。

 

ここで考えて欲しいのですが、なぜこれを彼らとわかったのでしょうか?

目や鼻や口の形なんてまともに見えません。

ちゃんと見えていないのに誰だかわかるのです。

 

これはこの人達が出している『雰囲気』によるものです。

そして我々は、その『雰囲気』に対する、その人の『印象』を持っているのです。

 

2. 雰囲気・印象を読み取る

それはどういうことなのでしょうか?

例えば目を瞑って、身近な人の顔を思い出してみてください。

恋人でも推してるアイドルでも親でも誰でもいいです。

はっきりとした形はわからないまでも、なんとなくの顔が浮かびますよね?

なんとなくこんな髪型、なんとなくこんな目と口、なんとなくこんな輪郭。

といったように、『なんとなく』ではありますが思い出せるのです。

 

これがあなたの持つ、その人に対する『印象』です。

この人はこういう顔なんだ、という印象を持っているのです。

 

言い方を変えると、あなたはこの人の顔を『認識』しているということになります。

『認識』は、ただ見えるということと違います。

 

認識できているので、その人に会ったときに、あなた誰だっけ? とならないのです。

その人の顔を見て、その人だとわかるのですから。

 

3. バランスをとる

まずは目や鼻や口を細かくする前に、全体のなんとなくのバランスを捉えます。

このバランスが、当たり前ですが最も重要なことです。

繰り返します。

バランスが最も重要なことです。

いくら目や鼻や口をリアルに出来ても、バランス的な位置や大きさが間違っていたら本人にならないのですから。

それを、その人の印象を意識しながら行います。

 

この人はこんな感じの顔だ、笑う時の目が三日月目、口がいやらしい、ほっぺの丸みがキュートだ、顎がこんな風に尖ってる、メチャ垂れ目、鼻が広がってる、などなど、その人の印象を言葉にして、みたままというより、印象を意識するのです。

 

これはデッサンなどをきちっとやってきた人たちからは反感を買うかも知れません。

デッサンは見たまま、ありのままを正確に表現する練習なのですから。

それらはもちろん技術として持っていた方が良いものなのですが、
私のこの印象を捉えるという考え方は、コマーシャルアートのプロとして仕事をしてきて培ってきたものです。
というのも、ありのままに、自分の気持ちを込めずに見たままを描いたり作ったりしても、現代はCG技術の発展により、写真をそのまま絵にできたりスキャンして立体にできたりしてしまいます。

いくらありのままを表現しようとしても、絶対に写真やスキャンの正確さには叶わないのです。

機械的に出来ることであれば、それができてもどんどん淘汰されてしまいます。

だから自分の持った印象を意識して表現することは機械との差別化を図る上で、そしてプロとして生き残る上で大切な要素になっていると信じています。

 

4. 時間をかけない

話は少しそれましたが、印象を意識してその人の顔の全体のバランスを捉える。

それを、絵であれば15分くらい。

造形であれば、最初は1時間半くらいを目安に行います。

最初は酷い物が出来るかもしれませんが、それでも時間が来たら強制的に終了します。

そして新たにまた行います。

時間内にある程度雰囲気を出せるようになるためには、細かい所に時間をかけてはできないという事がわかってきます。

上手くできない人のほとんどの原因が、全体の形ができていないのに細かくしてしまう事なのです。

これを強制的に制作時間を短縮する事によって、細かくできなくしてしまうのです。

もちろん私のような人が見てくれるのが好ましいのですが(笑)、一人で練習していても、多少時間はかかりますが、同じ間違いを何度も繰り返していけばいい加減その事に気づくのです。

それを、一つの作品にずーーーっと時間をかけて、ひたすら修正することを繰り返してしまうと、次に作るときに最初の形を取る段階で、前回は何を間違っていたのか忘れてしまい、その分成長が遅れるのです。

4. なんとなくの雰囲気を捉えながら数をこなす

最初の段階では仕上げようとしなくても全く問題ありません。

むしろ仕上げない方が良いくらいです。

とにかくひたすら全体の形をとる訓練をします。

 

何よりも大切なのはバランスです。

プロポーションと強弱。

影の強さは形の奥行きとも関係があり、強弱もプロポーションの一要素であるとも言えます。

兎にも角にもプロポーションが捉えられるようにしていきます。

 

それから大事なのは数です。

数をこなさなければ上達はありません。

やればやるほど腕が上がる事を自覚して励むと良いです。

ただし、初期の記事で書いたように、何も考えず闇雲に数をこなしてもいけません。

毎回プロポーションを意識しながら、考えながら数をこなすのです。

どんなに綺麗な影を描くことよりも、どんなにリアルなシワを作ることよりも、どんなに魅力的な目にすることよりも、配置、すなわちプロポーションをキチッととることです。

プロポーションが間違っていれば、上記のものがどんなに良くてもちゃんとならないのです。

一番大事なことはプロポーション
何よりもそれがちゃんとできるようにすること。

そしてプロポーションをとりながら意識することは、前に書いた、
“雰囲気を捉える” ということです。

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なんとなくの形を捉えながら、その人のなんとなくの雰囲気を出してみる。

目全体が上向きなのか下向きなのか、なんとなくにやけてほっぺたが膨らんでるのか、少しげっそりしてるのか。

面長なのか、丸っこいのか、顎がシャープなのか。

額は広いのか狭いのか。

なんとなくの特徴は誰もがあるはずです。

それをなんとなく捉えていくのです。

唇のラインやまぶたや鼻翼の形など詳しく見てはいけません。

例えば顔にストッキングをすっぽり被せたような状態をみるのです。

 

それが顔のボリューム感なので、それがなんとなくできていなければ、どんなにリアルな目や鼻や口をつけてもしっくりこないのです。

はっきりと見ない目を養うために、繰り返し練習してみましょう。

矛盾に感じるかもしれませんが、上手な人は、はっきり見えなくする目を訓練によって持っているのです。

最初の方で紹介したボカした画像をボカしてない画像から読み取る目です。

ちなみによく使われている方法は、目を細めて見るやり方です。

そうすれば細かいものが見えなくなり、大雑把な塊がなんとなく見えます。

それを活用するといいですね。

 

とにかく常に全体を見て作っていく目とやり方を数をこなしながら養っていきましょう。

まずは短期間、短時間で数をこなす。

これがその後の成長のスピードを飛躍的なものにできるのです。

 

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